イノベーションの神話


イノベーションの神話

イノベーションの神話


イノベーションバズワード」という印象が拭えるかなと思って読み始めたけど、違った。例えば、

イノベーションは探求が行われる現場から生み出される


としながらも

イノベーションは温室で生い茂る


要は、イノベーターが自分を正当化する姿勢が背後に見え隠れするのです。最初からそう読むと、とてもお役立ち本です。インパクトの強い言葉がいっぱいなので、モチベーションを維持したり、上司をいいくるめるにとても役に立ちそう。言葉の力でイノベーションは神格化されているけど、そのせいでイノベーションへの障壁が高くなってたり、奇跡のような成果を求められたりしている。なので、本書で言葉や事例を集めるから、うまく使って自分の好きなように価値を高めたり下げたりしたらいいよ、って感じです。ていうか、天才は1%のアイデアと99%の努力と200%の売り込みで成り立ってる。全部含めてイノベーション


ただ売り込みも含めて、イノベーターがなすべきだということが明確に書かれていて、そこはよかった。でもきっと、人によっては都合の悪いところは読み飛ばしちゃうんだろうなとかも思った。


あと、イノベーションの実例がいろいろ書かれているのは面白い。トーマス・ジェファーソンヤード・ポンド法を廃する提案をアメリカが受け入れていたら、1999年に3億ドルもする火星探査機が宇宙の藻屑にならずにすんだかも、という話とか(火星探査機は帰還のときのヤード・ポンド法メートル法の変換プログラムが抜けてたため、火星を低空飛行し火星大気圏で燃えてしまった)。いろんな意味で楽しんで読める本です。