ロスト・イン・トランスレーション

劇場は激混み&外人率高しだが、結構笑えるしかなりよかったすよ。

この映画は前情報が華やかでしたが、一言でいうと孤独な異邦人同士の一瞬の心のふれあいを描いた映画です。過剰な日本的表現が目立つので、日本文化への侮蔑ととらえて愛国心に目覚めるのもありですが、自分の解釈はちょっと違いました。

普段はあんまり意識しませんが、人は生まれてから死ぬまで孤独なのは絶対なので、いわば一生異国をさまようようなもんです。そのなかで人と仲良くなれたり気持ちが通じ合うとちょっと嬉しい。普段は気にも留まらないこの嬉しさを強調して表現しているだけの映画で、強調方法として言葉が通じない異国で孤独なつまらない日々を強いられるという設定を採用しただけであると思ってます。人の本能ともいうべきこの感情をあまりにストイックに表現しているので、ある意味、監督ソフィア・コッポラの妙な男らしさまで感じます。

とはいえ、日本文化をあるときは美しくあるときは奇異に見えるよう表現したり、(ソフィア・コッポラお得意の)ディティールを描きつなぎあわせる手法で、ストーリーに幅を持たせて飽きさせない効果を得ています。そのあたり、話がくどくならず非常にバランスがとれています。(ちなみに、前作の「ヴァージン・スーサイズ」ではソフィア・コッポラはディティールに凝り過ぎて、悲しいストーリーよりかわいいディティールの方がインパクト大という結果に終わった失敗作という認識です)

笑わせながら、普段見失っていた孤独で居場所のない気持ちや一瞬の心のふれあいに対する切なさを強烈に喚起され、共感させられます。結構いい映画でした。